危険な健康被害をもたらす可能性から関連機関より厳しい警告がされ続けているにもかかわらず、不正なセルフタンニング薬であるメラノタンIIを宣伝するソーシャルメディアは依然として市場にはびこっています。加盟店はアカウントの解約や規制当局の監視を逃れるために、一般的なパッケージやあいまいなマーケティングでその活動を偽装し、消費者の安全を危険にさらすだけでなく、カードブランドに対する罰金や規制当局の監視のリスクを高めていることをレジットスクリプトは確認しています。
メラノタンIIの仕組みと流行の理由
メラノタンIIはペプチドまたはタンパク質ベースの薬剤であり、α-MSHと呼ばれるホルモンを人工的に合成したものです。メラノタンIIの一般的な形態である注射や点鼻薬として使用すると、α-MSHを模倣し、数日以内に皮膚の色を劇的に暗くします。このメラニン増加作用が最も有名ですが、この薬には他にもいくつかの危険な作用がある可能性があり、心臓、血液、目の障害などを引き起こすことが報告されています。
美と健康の象徴として黄金色に日焼けした肌を望む人々にとって、急速に皮膚を暗くする作用があるメラノタンは理想的な肌になるための「近道」となる製品です。2022年のBBCの記事は、TikTokで数百万人のフォロワーに鼻スプレーを宣伝する数十人のインフルエンサーに対して注意するよう呼びかけています。それに関連して、ソーシャルメディアを通じて鼻腔用セルフタンニング製品を、一般的な自社ブランドのパッケージとともに販売する加盟店が増加していることにレジットスクリプトは注目しています。メラノタンIIには高いリスクが伴うため、レジットスクリプトはこの製品の動向とマーケティング手法に注視しています。
違法かつ規制されていない製品の危険性
メラノタンIIは当初、がん予防薬として開発されましたが、それ以来、複数の国で禁止、警告状、さらには刑事訴追の対象となっています。アメリカ食品医薬品局(FDA)はこの医薬品をどの疾患に対しても承認しておらず、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどの規制当局もこの医薬品を販売するのは違法とみなしています。
鼻スプレーの使用者からは、頭痛、めまい、パニック発作、吐き気、嘔吐、顔面紅潮、異常なほくろなどの副作用が報告されています。また、悪性黒色腫 (メラノーマ)との関連も指摘されています。メラノタンIIの危険はさておき、消費者がいくつもの謎の成分にさらされるリスクもあります。BBCは、10種類のセルフタンニングキットを分析したインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究化学者の調査結果を紹介しています。この記事には、「認可された医薬品には10種類程度の成分が含まれているだろうと想像していたが、いくつかの製品には100種類以上の未確認成分が含まれていることを発見してショックを受けた」と書かれています。セルフタンニング用鼻スプレーの販売者は、取り調べを回避し、事業を継続するために、しばしば製品の成分に関する情報をほとんど提供しません。
メラノタンIIの販売者はどうやって見つからないように行動しているのか?
メラノタンには顕著な健康被害リスクがあるにも関わらず、その人気は衰えていません。また、規制状況のせいでメラノタンの需要がなくなったりもしていません。TikTokは、メラノタンIIとセルフタンニング用鼻スプレーを宣伝または販売する動画を削除し、#nasaltanningspray、#melanotan、#melanotan2などのハッシュタグを禁止することで、危険な流行を緩和する措置を講じています。しかし、レジットスクリプトが確認している他の悪質なケースと同様、多くの販売者は監視を避けるため、単にマーケティングを変更するだけです。
2017年から2021年にかけて、レジットスクリプトが遭遇したメラノタン関連の加盟店は、ほとんどBRAMとVIRPアクションでご報告したもののみで、これらの加盟店が禁止された製品を露骨に販売していたことを示しています。しかし近年、「メラノタン」という用語を避けながら、薬物に酷似したセルフタンニング用鼻スプレーの一般的なパッケージを販売する悪質な業者のリスクを指摘するために、Suspected Transaction LaunderingのLSアクションを使用してリスクを報告したものが増えています。アナリストが確認できている加盟店の日焼け製品がメラノタンIIの再包装品である可能性を示す共通点は以下の通りです。
- 安全シールが貼られていない一般的なプラスチック容器に入っている。
- 製品には、専門的でない簡易なラベルが貼られている。販売者のロゴが入った自社ブランドであったり、ラベルが全くない場合もある。
- 通常、製品には成分表がなく、製品説明もまばらであることが多い。
- マーケティングでは、メラノタンIIに関連する一般的な用途や目的を説明することがある(例えば、「鼻腔用」の表現、日焼けの「強さ」への言及)。
- マーケティングには、深く日焼けした肌、くっきりとした日焼けの線、日焼け前後の肌を比較した個人の画像が含まれることがある。
- マーケティングでは、製品を「MT2」または単に「2」(メラノタンIIの一般的な略語)と呼ぶことがある。
- 製品のパッケージは、メラノタンIIを含むことが知られている製品の形状(鼻スプレーキャップ付き小瓶など)に似ていることがある。
レジットスクリプトはリスクを検出するために絶えず適応しています。
規制やメディアの監視が強化される中、多くの加盟店があらゆる方法で影に隠れて違法な製品を販売し続けようとしています。しかし、消費者の安心、インターネットと決済業界のエコシステムの安全にとって、こうした加盟店の検出は依然として不可欠です。レジットスクリプトは、メラノタンIIとセルフタンニング用鼻スプレーのオンライン上の存在の移り変わりに細心の注意を払っており、よく見られるマーケティング戦略を学び、アナリストがソーシャルメディアのタグ禁止などの措置では見過ごされる可能性のある微妙なリスク要因を特定できるようにしています。レジットスクリプトのアナリストは、メラノタンIIに関連するあらゆるリスクを引き続き注意深く監視していきます。