インターネットの手軽さと、様々な支払い方法が選択できる利便性から、日本でもネットショッピングの利用は年々着実に増加しています。総務省統計局によると、2人以上の世帯におけるネットショッピングの利用割合は過去数年にわたり安定して50%を超えており、時節柄2023の年末には60%近くにまで上昇しました。支出額も毎年前年を上回って推移しています。
ネットショッピングの利用者が増えるとともに、オンライン取引に関連する消費者トラブルも増加の傾向にあります。その中でも、定期購入をめぐる相談は後を断たず、国民生活センターから何度も注意喚起が出されています(平成29年、令和元年、令和5年)。2023年には詐欺的な広告表示を規制する改正特定商取引法が施行されましたが、その後も相談件数は増加しています。
特に問題となり、目立つのはいわゆる「お試し商法」で、「お試し」として商品を割引価格で購入した後に、気に入れば定期購入ができるという形態を取っているように見えるものの、実質は最初から定期購入へ消費者を引き込もうとするビジネスです。
このようなウェブサイトには、「お試し価格」「モニター価格」「今だけのキャンペーン価格」「初回無料」「初回大幅値引き」「今すぐ簡単に申し込む!」といった広告表現が頻繁に見られます。派手な宣伝文句や、「キャンペーン終了まであと◯時間!」などと煽るような文字、またメディアでよく見る何となく知っているような気がする芸能人が「これはおススメです!」と絶賛していることなどにも後押しされて、「今買えば安いから」「一回だけのお試しだから」と、大きな「申し込み」ボタンをクリックして購入した商品が、実は定期購入だった、と後から気づくことになる消費者は少なくないようです。
二回目の商品が送られてきたり、二回目の請求がきたりして定期購入であることに気づいた消費者が、契約を解除しようとしても、電話がつながらなかったり、「最低3ヶ月はお試しいただくのが条件」などと言われて解約を断られたり、解約料を請求されたり、といったトラブルがあることが消費者の相談事項から伺えます。二回目以降の請求は初回価格を大幅に上回ることも多く、結果として、消費者は予定していたよりも高額な出費を余儀なくされることになります。
そもそも定期購入であることがウェブサイト上で認識しづらいことや、解約が容易にできないことなど、特に問題となるこのようなケースからは、消費者を無自覚に定期購入の契約へと誘い込んで利益を得ようとする作為的な意図が窺われます。特定商取引法では、解約方法など、取引条件を明確に表示することが販売業者に義務付けられていますが、表示自体はされていても、誤解を招く表現であったり、分かりやすい表示とは言えないものであったりと、問題は残されています。
例えば、初回限定の大幅な割引を強調して、消費者には単品購入のオプションを与えずに定期購入のみを扱うような販売方法には注意が必要です。「初回価格」と言わずに「モニター価格」「お試し価格」と言ってみたり、「定期購入の申し込み」と言わずに単に「今すぐ、簡単に申し込む」とだけ書いてあるのも、定期購入であることをしっかり消費者に開示していない例であると言えます。また、画面を延々とスクロールしないと気づかないようなところに「最低◯回のご購入が条件です」「中途キャンセルの場合は差額を請求します」などと書いてあるのも、分かりやすいとは言えません。申し込みボタンを押すと、こうした「但書」の部分をスキップして申し込み画面へ進むことさえあります。「キャンペーン終了まで後少し」というカウントダウンも、急いで購入しなければと消費者が焦って、条件をよく読まずに購入手続をしてしまうことへと繋がりかねません。
また、定期購入であることを明示していても、解約手続についての情報が不十分な場合もやはり注意が必要です。「面倒な手続きゼロ」と謳っていながら実際には煩雑な手続きが必要であることが判明し、特定商取引法違反にあたる誇大広告に該当すると判断されたケースもあります。
こうした広告表示方法、販売方法は、特定商取引法や景品表示法などを含めた法規制上問題となることが多く、上記のケースを含め、これまでにも複数の業者が、定期購入をめぐる不当なビジネスで処分を受けています。
また、購入者の意図に反して定期購入に引き込むようなビジネスは、ペイメントプロバイダにとっても、チャージバックのリスクが高いと言えます。マスターカードでも、こうしたビジネス形態を取る事業者には、特定のマーチャント・カテゴリー・コード (MCC) を割り当てることとされており、またそのコードはハイリスク分野に分類されています。
さらに、チャージバックのリスクを分散するために、複数の決済アカウントを利用してトランザクション・ロンダリングを行う作為的な定期購入ビジネスも存在します。
レジットスクリプトはこのように、消費者心理を巧みに操作して利益を得ようとする事業者を監視し、またペイメントプロバイダにかかるチャージバックのリスク、さらにはトランザクション・ロンダリングのリスクをも軽減するべく、モニタリング業務を提供しています。