
「ソーシャルカジノ」という言葉をご存知でしょうか?ソーシャルカジノとは、一般的にスロットやポーカーなどのカジノ風ゲームやギャンブルシュミレーションを、実際にお金を賭けずに遊べるオンラインゲームのことを指します。基本的には無料で利用できますが、ゲーム内通貨を購入することでプレイを続けられる仕組みになっており、実質的にギャンブルに近い体験を提供しているのが特徴です。
近年、日本ではスポーツ選手や芸能人など著名人らのオンラインカジノへの関与が次々と明るみになり、ニュースでもオンラインカジノに関する報道を目にする機会が増えています。最近のオンラインカジノの多くは、賭博に関連する規制を回避するために、スイープステークス(現金を含む景品を用いた懸賞)形式の無料ゲームを提供するビジネスモデルを採用し、若年層が賭博の世界に足を踏み入れるきっかけになりうる点が懸念されています。また、流動的な法規制の動きに伴い、各国の政府や決済サービス提供会社も新たな課題に直面しています。
レジットスクリプトは、こうした世界各国における複雑な法的環境について最新情報を提供し、オンライン決済関連を担う企業の安全を守るサポートをしています。なお、弊社による関連セミナー動画「Social Gaming and Sweepstakes Casinos(ソーシャルゲームとスイープステークスカジノについて)」はこちらからご覧いただけます。
「無料版」カジノが法規制を回避する裏技
レジットスクリプトでは、「無料版」と謳うカジノ、いわゆるソーシャルカジノやスイープステークスカジノ(懸賞形式カジノ)の増加を確認しています。このようなプラットフォームでは、賭博に関連する規制の網を潜るために「二重通貨モデル」が採用されます。具体的には、プレイヤーはゲームセンターのトークンのようなゲーム専用コインをまず購入し、特典として、スイープステークス用の別コインを受け取ります。この後者のコインが、スイープステークス用として、景品や現金と交換可能な仕組みになっています。
このようなプラットフォームでは、コイン配布イベントや毎日のゲーム参加の報酬として無償でコインを提供し、あくまでも懸賞形式のソーシャルカジノゲームであることを強調しています。しかし実際には、無料で遊べるプレイ回数や時間を制限があるなど、消費者を惹きつける仕組みをもとに、ゲームを続けて楽しむために必然的にコインの追加購入を促すなどの構造になっています。このような運営モデルを使うことで、従来のオンラインカジノとは異なる合法な懸賞ゲームとして広告展開されているされているのです。しかし、実際には法的にグレイゾーンであり、米国ワシントン州や日本など一部の法域では、違法なオンラインギャンブルとみなされ、法規制に抵触する恐れがあります。

上の図は、懸賞型カジノと従来のオンラインカジノとの違いを図解したものです。
日本におけるオンライン賭博の蔓延
日本の警察庁の実態調査によると、オンラインカジノの利用者のうち、4割以上がその行為が違法だと認識がなかったと回答しています。この背景には、日本国内でも広まりを見せるソーシャルカジノの存在が大きく影響しています。法律上のグレーゾーンを突いた設計や、違法性に関する明確な注意喚起を怠っている点などから、日本で合法とされるパチンコに類似した側面もあり、多くのユーザーが違法性を認識しないまま利用していると考えられます。警察庁は、サイト上で日本をターゲットにしていると見受けられる海外オンラインカジノサイト40件についても調査を行いました。その結果、半数のサイトで、90%以上が日本からの利用者であることも判明しています。そのうち、日本国内からの利用禁止についての警告を明確に掲載していたのはたった2つのサイトにとどまっており、多くのサービスが日本の消費者をターゲットにしている実態が明らかになっています。
こうしたオンライン賭博の増加の傾向に合わせ、若者層を中心に、ギャンブル依存症患者が増加も深刻化しています。急増の背景には、コロナ禍でのオンラインギャンブルへのアクセスが増えたことが一因として挙げられます。朝日新聞によれば、ギャンブル依存症問題の啓発活動を行う公益社団法人に寄せられた相談のうち28%以上で消費者金融からの借金問題や親族・職場からの窃盗など違法行為に関連する相談であったことが報道されました。こうした深刻な状況を受け、日本政府は、令和7年6月、違法オンラインギャンブルの勧誘・仲介を禁止する法律を成立させました。これには、オンラインカジノを紹介する「トップ10サイト」のようなものや、違法な賭博サービスへと誘導するアプリ・ウェブサイトの掲載行為も含まれ、より強固な規制体制の整備が進められています。
ギャンブルへの入り口?ガチャゲームとルートボックス
日本だけでなく、世界各国においても、ギャンブル問題が深刻化しており、米国も例外ではありません。特に未成年者がアクセスするリスクについて、米国ではオンラインカジノやゲーム内課金が問題視されています。これが、ギャンブルへの入り口となるケースが増えており、各国で注目されています。
ソーシャルカジノサイトの多くは、18歳以上向けと宣伝されているにもかかわらず、年齢確認システムが甘く、未成年者の利用やアクセスが許可されてしまっている実情があり、米連邦取引委員会(FTC)もこれについて警鐘を鳴らしています。例えば、子供でも閲覧できるオンラインカジノとは無関係なウェブサイト上に、年齢認証なしで簡単にアクセスできてしまうオンラインカジノサイトの広告が掲載されている事例も確認されています。
さらに、未成年者をターゲットにした多くのオンラインゲームには、ゲームプレイにルートボックス(戦利品ボックス)を取り入れています。ルートボックスとは、現金で購入できるゲーム内アイテムが含まれた仮想の報酬ボックスのことを指します。また、一般的にガチャゲームと呼ばれているような人気ゲームスタイルも、ルートボックスと同じく主に未成年者をターゲットにした同様のシステムが導入されています。ガチャゲームは、日本のカプセルトイ自動販売機、ガチャポンに由来している通り、ランダムな報酬によって消費者にさらなる課金を促すように設計されています。そしてこのような課金機能を含むゲームは、若者に影響力のある人気インフルエンサーを起用したマーケティングで未成年の興味を引いています。
米国心理学会(APA)のウェブサイトに掲載されたある調査によると、回答者の20%がルートボックスを通じてギャンブルに触るようになり、さらに80%以上が18歳になる前に初めてのルートボックスの購入を経験したとのデータが報告されています。ガチャゲームやルートボックスがギャンブルに該当するかについては見解が分かれるところですが、これらが依存症の一因となっていることは、複数の研究によって示唆されています。また、ギャンブル・ヘルス・アライアンスが実施した調査では、ゲーマーの13%がルートボックスに起因する負債を抱え、9%が返済の見込みのない借金をし、15%が保護者に無断で持ち出した金銭を使用したことがあるという深刻な実態も明らかになりました。
国際ブランドの動向とレジットスクリプトによるリスク検知
国際カードブランドは、オンラインカジノをはじめとするギャンブル関連のコンテンツを「ハイリスク領域」として位置づけ、監視体制を強化しています。とりわけ、加盟店には適切なMCC(加盟店カテゴリーコード)の登録が厳格に求めら、ルール違反や違法な賭博行為が確認された場合、罰金の発生や提携停止といった厳しい措置が取られる可能性があります。
さらに、表向きには問題のない商品やサービスを提供しているように見せかけながら、実際には違法オンラインカジノなどへの送客や資金移動に関与している疑いのあるウェブサイトも多く確認しています。レジットスクリプトでは、こうしたカード決済を悪用したトランザクション・ロンダリング(資金洗浄)リスクの専門家チームを設けて、日々リスクの監視・検知を行なっています。
レジットスクリプトで規制動向の先取り
レジットスクリプトは、世界各国・地域の法規制に対応したグローバルなコンプライアンス監視を専門としています。当社の法規制の専門家とアナリストのチームは、決済サービス提供会社がリスクの高い加盟店を特定し、規制措置の対象となるリスクを軽減するとともに、ブランドイメージや顧客への影響を最小限に抑える支援を行っています。当社のデータベース及びモニタリングサービスがどのようにお役に立てるかについて、詳しくはこちらよりお問い合わせください。