日本経済の動向は様々に報道されていますが、一般市民の感覚として常に変わらないのは副業に対する興味とその必要性であると言えます。長時間労働の風潮が是正される中、正規雇用で働く人々の自由時間が増える一方で、賃金上昇が限られる上に残業代が減少することによる、収入補填の必要性も出てきます。とはいえ、時間的、物理的な制約を考えると、簡単に副業と言っても、必ずしも誰しも容易に実行できるものでもないでしょう。
このことは「経験がなくても始められます」「初期投資は一切不要」「隙間時間で働けます」といった広告文句で副業を斡旋するビジネスが存在すること自体、またこうしたビジネスに対する需要の大きさに裏付けられていると言えます。空いた時間に自宅でパソコン一台で手軽にできて、一日数時間の作業で安定した収入が得られるなら、その秘密を知りたいと誰もが思うはずです。
このような「秘密」は俗に情報商材と呼ばれ、専用のポータル市場も存在するほど日本では大きなビジネスで、その規模は年間200億円以上とも言われています。SNSを含めてインターネット上では様々な情報商材が広告販売されていますが、特徴的であるのは手軽に始められることと、短期間に資本を回収できることが強調されている点です。また、商品として売られている情報商材とは「いかにして(特定の)副業を行うか」という情報そのものであり、PDF形式などでダウンロードできるデジタルコンテンツであることが一般的です。そのコンテンツを購入すれば特典としてDVDがついてきたり、期間限定のサポートが保証されていたり、またセミナーへの参加やサポートグループへの入会といったオプションが特典としてついてくる場合もあります。
情報商材は副業の機会を求める消費者の需要に応えるビジネスであるように見えますが、逆に消費者から利益を得ようとする意図が強く窺われるケースも目立つ傾向にあります。問題となる点は、広告販売の手法と販売金額の相場にまとめられます。
一般に出回っている情報商材は、消費者にとって必ずしも安くない金額で販売されていますが、「少しでも皆さんの負担を軽くしたいという気持ちからここまで安くしました」などという文言を添えて金額への心理的抵抗を和らげるように試みている場合も目立ちます。また情報商材を購入して副業ビジネスを始めれば、短期間で収入も上がることが期待できるので、資本はすぐに回収できることを保証したり、万が一期待された結果がついてこなければ、全額返金保証します、と謳っていることもあります。このように、金額の高さににもかかわらず、初心者に易しく手をつけやすい副業であることを窺わせているのが情報商材の特徴と言えます。
もう一つの特徴は、その手軽さや成功の保証、特典のメリットなどが華々しく言葉を尽くして説明されている一方で、肝心の情報商材そのものについてはあまり詳しい説明がないことです。商品自体は「情報」であり、デジタルコンテンツなので、実際に購入するまでは中身を見ることができませんが、その中身が何であるかという説明も、ほとんどない場合が多く、派手な広告文句につられて購入した結果、思っていたものと違った、何千円も出してダウンロードしてみたら内容は1ページのPDF文書だった、などという消費者の落胆につながることは十分に考えられます。特に「簡単に始められる副業」としてもてはやされているのがいわゆる転売、特に無在庫転売ですが、それが本当に安定した収入源となるのかはともかく、そもそもフリマ市場等でこのような転売を行うことは禁止されています。
このような情報商材を手にして、思ったようには収入が得られないと悟った消費者が、返金を求めたとしても、「サポートは続けるから◯ヶ月はトライすること」「収入が約束されたように伸びないのは購入者の努力が足りないせい」などとかわされて、返金を拒否されるケースも報告されています。結果としてチャージバックのリスクも高まるということになります。また、宣伝文句によっては「誇大広告」と見なされるケースもあります。
レジットスクリプトはこのように消費者心理の弱みにつけ込んだ広告販売を行う事業者を監視し、ペイメントプロバイダへチャージバックのリスクをも軽減するべく、モニタリング業務を提供しています。